事業仕分けについて

(事業仕分けの実施の経緯)
 現在の行政を簡素で効率的・効果的な行政システムに変えていくことは、最小の経費で最大の効果という自治法の趣旨でもあるがこれまでなかなか役所みずから手をつけられなかった。 無駄な仕事や役割の薄れてきた行政サービスは大胆に整理し、企業経営の手法のメリットを生かした形で行財政改革を徹底していくことが今、極めて重要である。 平成18年度から全ての事務事業について行政サービス基本台帳を作成して「行政サービスの棚卸し」を行い、市の事務事業に対する税金の投入の優先度やそのあるべき実施主体等を評価している。 
 そもそも新市長が歴代初の民間出身(岡山おもちゃ王国社長)であり、「行政サービスの棚卸し」というこのキャッチコピーには単なる役所的な事務事業点検ではなく企業経営の応用であるという意気込みを表している。 行政改革についてはこれまでも取り組んではいたが、従来の体制を刷新するため組織自体も改変しトップダウンだけでなく下からのボトムアップも融合した形ですすめていく。 また行財政改革推進本部に有識者をまねいて外部の目線を取り入れたり、新行政経営システム推進班等でNPM(ニューパブリックマネジメント)の導入・開発などもすすめている。 
 また新しい行革組織はただのプロジェクトチーム方式にとどまらず、通常の職員に行革担当者として辞令をだすことで、特定セクションとしての他人事ではなく各現場に責任感をもたせることにしている。

(事業仕分けの構成)
 3つで構成される
1,各課の自己点検  必要度、費用対効果、行政の関与の必要性など総合評価は5段階
2,「市民事業仕分け」 市民にニーズ、税金投与の必要度など価値観を問う。
3,「庁内事業仕分け」 市民仕分け以外の全ての事業を対象に庁内で自己チェックを行う
 市民事業仕分けについて、その評価者は学識経験者4人、団体推薦6人、公募市民40人の計50人程度で構成される。 公募については、2月試行時は40名募集のところ65人応募があったが、特定の運動団体に偏っていた。 しかし4月の本格実施の際はあまり偏りがないように呼びかけをするなどした。 その結果35名の応募ということで抽選はおこなわなかった。 男女はほぼ同数、自営・サラリーマン・その他の分類でも3分の1づつになるなど、たまたまバランスがとれた配分となった。 今回はたまたまうまくいったが自由公募であるので今後は偏りがないようにするのが課題である。 参加者は昼食以外は提供されないほぼボランティアという形で、時間は9時5時で更に全部の会合の出席を求められるなど、非常に厳しい条件である。 また極端ないわゆるクレーマーはみうけられない。

(事業仕分けの活用)
 事業仕分けの結果はホームページで公開し、パブリックコメントを求め、無作為抽出の市民から意見をきいたりなどする。  岡山市では、付属機関のうち法令に決まっているもの以外については総合政策審議会に一本化しており、ここで一度諮って議案として作成され、議会で最終決定する。 総合政策審議会については、市が案を作る際にいろんな市民の意見をきいてから議案作成するもので、同時にその過程において議会に報告や意見を聞くものであるので議会と対立するものでもなく、議会の決定権を犯すものではない。

(仕分け事業の対象と基本資料)
 対象事業としては、900ある予算の事務事業コードをばらしてとりあえず2100事業。各課設定なのでもっと細かくすれば2500くらいにはなる。 
 またそれ以外にも例えば議会対策など事業費がついてない人件費だけの事務が2400くらいあるので、両方あわせると総数は4500以上あるが、それ全部やると大変なので人件費のみの事業については今年度は対象外にした。
 そのうち市民仕分けで議論するのは大きく26事業で2100事業ベースだと100事業ぐらいに該当する。 
 庁内仕分けについては、今年度は細事業ベースで350事業をこなし、残りは来年以降3年間で全部取り扱う。
 仕分けを討議するための基本資料とし、それぞれの事業について「行政サービス基本台帳」を担当者が毎年作成する。 台帳の特長は概算トータルコストとして人件費を包括していることや、概算人件費比率、単位サービスコスト、受益を受ける者・団体欄などをもうけている。 この基本台帳をつくる事によって、事業の本当のコスト意識や優先度についてなどの実態を把握することで自分達の事業を客観的にみる効果もある。 また台帳だけではわかりにくいので、「対象事業のあらまし」を添付している。このあらましには考えられる仕分け及び市が提案する施策をのせている。 
 これらの資料作成作業や庁内事業仕分けなどの過程で実感するのは、具体的な対象者やニーズ、アウトカムなど行政担当者自体が把握しきれてない。 マーケティングをちゃんとして定量的に判断しなければならないが、そうはいっても直感的にでも仕分けをすすめている。

(「市民事業仕分け」実施の意義)
 評価結果もさることながら、それ以上に結果にいたるまでの疑問や意見そのものが貴重な財産である。 市民の皆さんに行政サービスの実態を知ってもらい、問題点を共有し、共にあるべき姿を考えていくが最も重要である。
 

作業の方法としては「構想日本」の事業仕分けをベースにしている。 しかしこれまでの他自治体の行政マンをよんで多数決で必要かどうかジャッジをするやり方では実務的とはいえないため、岡山では新しいやり方を模索した。
 
(第2回市民事業仕分けの実施結果)
 テーマのひとつ奨学金貸付事業については、 国・県の事業とほとんど類似しており、市の施策としての意味が薄く、しかも焦げ付き多い。 真に必要な人のための制度、例えば岡山に有為名人材に投資するというような明確な意図をもつなど抜本的な改正が必要でないかとの議論もあった。 また意見のわかれたものなどの対応のために仕分け区分の下に自由記述欄をもうけた。
 仕分け作業はやってみると大変な労力がかかり、1つの事業を仕分けするのに1時間から2時間かかるので、1日3つくらいこなすと、へとへとになってしまう。 そのため当初、600ぐらいやりたかったが350位にとどめた 。
 担当者の個人意見としてはこの仕分け事業をずっと継続するためには行政評価条例、行革実施条例など法制化するのが望ましい。

(主なQ&A)
Q:市民事業仕分けをする際に、その事業の目的、必要性、経緯、内容など理解できてないと適確な議論にならないが、どのように進めているのか?
A:1事業の討議時間についておよそ1時間をベースにしており、そのうち15分を市からのその事業の説明にあてている。  率直にいうと15分では足りないが、それぞれの担当者が時間内にどれだけわかりやすく説明するか能力が試されている。 担当によっては、パソコンや図を使ったりしてうまく説明している人もいる。
Q:事業の受益者から生の話を聞かないと書類だけでは判断しづらいと思うがそのような機会はあるのか?
A:受益者から意見を求めれば当然必要となるだろう。 特にこの場ではそのような機会を設けていない。 むしろ担当者が普段から受益者への聞き取りや場合によってはアンケートなどやっとくべきであり、これを機にそういったこともおのおのすすめていきたい。
Q:基本台帳など各事業を評価する際はあくまで担当者レベルで判断しているのか?
A:担当者からだされたものを局内で調整し、局レベルでの評価をしている。
Q:事業単体でみるだけでなく、他の事業との連携など施策全体から調整すべきことが多いのではないかと思うがどのようにしているのか? A:今年度はなかなかそういうことはできていない。 行政の場合は施策ベース自体が抽象的すぎて、企業がやるような数値にもとづくマーケティングはできていないので判断しづらい。 これからそのようにすすめたいとは思っている。
Q:仕分けを進めていくと必ず民営化、民間委託への方向へすすんでいくと思うが実態はどうか?
A:民間委託に移行すべき事業はかなり多いが、民営化にすすむケースも結構ある。 どちらかというと民営化を増やしたい。 しかし民営化といっても完全に市の手から離れるわけではないし、また金だけ出すというのはよくない。 行政から企画や知恵を提供するようにならなければダメだと思うし、あくまでも最終責任は行政にある。 またあまりに安易な民営化・民間委託はダブルコストになることもあるし、コストは下がったけど結果的にサービスな質が下がるようなことがないように注意すべきである。
Q:民間の仕訳とは名称も内容も微妙に違うが意図はあるのか?
A:企業の棚卸しの発送を行政にいかすという考え方でやっている。 仕分けという語句は構想日本でつかっている言葉をそのままつかっているので他意はない。  仕分けの分類は大きく5つに分けられる。 
1,社会的ニーズがあるかどうか。ないなら廃止 
2,民間で十分可能でないか。  
3,国・県でやるべきでないか。または既にだぶってないか。 
4,市がやるにしても改善が必要でないか。 
5,現状維持
Q:行政の役割の位置づけや長期的に見て事務事業全体をどうするかなど目標設定などあるか?  
A:3年間の事業仕分けをやってみてだいたい見えてくる。 先にイメージするというより積み上げてみる。 また構想日本が当初取り入れていた事業の要・不要を仕分けする方法では難しい。 なぜなら一人でも利用者がいれば事業の不要を立証できない。 いわゆる必要となってしまう。  そのため要・不要という概念でなく、社会的なニーズが高いか低いかという概念で整理しないと市民の理解を得られない。
Q:民間人出身の市長だが、職員はちゃんとついていけていますか?
A:正直しんどいが、シビルサーバントとしてプライドをもつ職員がだんだん増えてきた。  公務員の組織としては成果主義の人事評価でも導入しないと根本的には変わらない。
Q:民営化・民間委託をすすめていくと公務員の当事者意識が薄くなる傾向も危惧されるがどうか?
A:あくまでも最終責任は岡山市ということを意識する。  民営化においても、サービス利用者へのモニタリング等をおこない利用者の評価を明確にすることなどを事業者との協定の際に義務づけ、その結果を行政がチェックするようにしている。

(所感)
杉並区が現在すすめている『(仮称)杉並区行政サービス民間事業化提案制度』に類似する制度として比較対照できるなど非常に参考になった。事業仕分けの基本資料となる行政サービス基本台帳やあらましについては、当区の事務事業・行政評価シートにあたる。 当区の事務事業分析は869項目にとどまっているが、岡山市はさらに細分化し2100事業を対象としている。また市民事業仕分けの際に40という大きな公募枠をもうけ、さらにそれらがほぼボランティアであることなども特筆すべき点である。


岡山市情報公開システムについて

1,公文書開示請求について
 公文書開示請求については、一般市民にとっては行政文書の題名すら難しく必要な文書の特定が難しいため書面によって窓口での請求が原則であるが、平成15年以降の、あらかじめ登録された文書についてはネット上の情報公開システムを使用しての請求が可能となった。
2,情報公開システムの基本的な考え方
 文書事務を電子化し事務の効率化を図るとともに、そのデーターを有効活用して情報公開に役立てる。
3,情報公開システムの構成
 「e-情報公開システム」文書件名の検索・開示請求を行う
 「開示判断システム」職員用のシステム。開示作業を行う。
4,導入経過
 平成12年度 庁内本格LAN本格稼働 「文書管理システム基本計画」 13年度 開発着手 15年4月1日文書管理システム本稼働 15年11月4日 情報公開システム本稼働
5,「e-情報公開システム」の概要
 運用時間は8時30分〜23時
 岡山市のホームページの情報公開室のページよりはいることができ、ホームページ上から検索が可能であり、これらの文書はプリントアウトすることが可能である。
 常時公開文書は請求に関係なく、どなたでもみることができる。告示文書はすべて常時公開文書に含まれる。
 開示文書閲覧では、これまでに開示請求があり、開示・一部開示された文書はネット上で誰でも見ることができ、特に注目されている文書などの場合は重複請求をさけることができる。
 ネットからの情報開示請求では、一度の請求で10件まで請求が可能である。またそのとき必要となるのが名前、住所、電話番号、メールアドレス、パスワードである。パスワードが必要な理由は開示決定の通知をメールで本人に送ることになるがその際のトラブルを避けるためである。
 個人情報の取り扱いについて、開示決定された文書に個人情報があればその部分は黒塗りになる。
6,開示請求実績
 平成15年度 37件(5ヶ月間)、16年度 327件、17年度114件
7,課題
 利用件数と比べて、費用がかかりすぎる。 利用が限られた人に偏っており、広がりがない。平成15年以降の文書しか対象になっていない。
主なQ&A
Q:杉並でも同一人物が頻繁に公開請求している事例があるが岡山ではどうか?
A:やはりその傾向がある。 同一人物が年間に138件請求するなど集中するケースがある。
Q:公開請求人の年齢や男女別等の統計はとっているか?
A:請求申請にそのような項目を設置していないため分類はできていない。
Q:インターネットによる文書請求についていくつかの自治体では請求人がいいかげんな人物になりすましたりするのを防ぐために、請求するのにまず個人登録をしているがどうか?
A:登録制は採っていない。 あまりに不適切であると判断した場合は請求却下にしている。
Q:外部接続にたいするセキュリティはどのようにしているのか?
A:情報公開システム自体は、市役所の本体に専用サーバーをおいて、そこから間接的に接続するようになっている。もちろんファイアーウオールも万全にしている。
Q:公開文書といっても膨大になるが、どの程度のレベルの文書をこの情報システムで公開できるのか?
A:現在、市役所で運用されている文書管理システムで扱っている文書はすべて公開の対象となる。 ただし学校等の教育施設、財務会計は別システムなのでこの文書管理システムにはつながっていない。また公開の時期であるが、その日に存在している文書は基本的にはその日の晩23時から明けた2時くらいまでには文書システムに登録される。
Q:例えば庁内会議などの資料や簡易な議事録も次の日に登録されているのか?
A:会議で使った資料なども次の日に見ることは可能である。
Q:年間約3000万近くの経費がかかっているが費用対効果をどのように考えているか?
Q:経費は情報公開システムだけでなく、文書管理システムをあわせた経費となっている。 単純に請求数だけを取り上げるのでなく、それに関するアクセス数を考えるとだいぶ利用されていることは実感できる。そもそも情報公開にある程度の費用がかかるのは、民主主義のコストとして必要であると判断している。
Q:ファイル形式がPDFだが意外と使い勝手が悪いと思うが他の形式など検討したのか?
A:いろいろ検討はしたが、他の形式では特定のソフトがないと見れないというデメリットがあるが、PDFの閲覧ソフトは無料で配布されているので誰でも使える。 また個人情報の問題で黒塗りとかもあるので文字情報というより、絵的な処理が適当と判断した。PDFも最近はバージョンがあがり、少し軽くなってきたりと使い勝手がよくなってきている。

所見
ネット上で公開請求することができ、開示決定された文書もネットで閲覧することができるなど優れたシステムであります。常時閲覧可能文書などは庁内の文書管理システムが整備されていることが前提となるが、杉並でも一部の文書を既に公開しているが、当区も文書管理システムが本稼働していることから応用すべき点は多々ある。情報公開請求に関しては、課題にもあったように利用が特定一部にかたよっていることや、一般区民には役所言葉になじみがなく自分が思い描いている資料がどこの文書になるか見つけづらいため、そのためのアドバイスをするという意味で文書による対面型の情報請求制度と平行しなければならないようだ。